臨時明細書制度の紹介
1. 意義及び趣旨
臨時明細書制度とは、特許及び実用新案を出願する際に既存の明細書の書式に依らず、自由な形式で作成された明細書を提出し、迅速な出願を可能とする制度をいう。
臨時明細書制度の施行前は、特許及び実用新案を出願する際、規定で定められた書式と要件により作成された明細書を提出しなければならなかったため、論文などの研究結果から明細書を作成する際に手間がかかり、迅速な出願を行う上で手間がかかっていた。
臨時明細書制度は、明細書に請求の範囲を記載せずに出願する請求の範囲提出猶予制度*と連携し、論文や研究ノート、あるいは技術書など自由な形式による「臨時明細書」だけで、先ず出願できるようにした制度で、2020年3月30日から施行されている。(注* 請求の範囲提出猶予制度:出願時に請求の範囲が記載されていない明細書を願書に添付できる制度で、請求の範囲がなくても迅速な出願が可能であり、請求の範囲を作成する時間的な余裕を確保するために設けられた制度をいう。特許請求の範囲は、出願日から1年2ヶ月までに補正を通じて記載するようにしています。)
2. 臨時明細書提出要件
臨時明細書出願では、定められたファイル形式を備えた臨時明細書を願書に添付しなければならない。臨時明細書のファイル形式は、特許庁が提供するソフトウェア、あるいは特許庁ホームページを用いて生成した標準ファイル形式以外にも、商用のソフトウェアを用いて生成したファイル形式*であっても可能である。したがって、出願人は、論文や研究ノートなどに記載された発明を別途の変更なしに原本のまま提出することができる。(注* 提出可能なファイル形式:hwp、doc、docx、pdf、ppt、pptx、jpg、tif)
3. 臨時明細書修正書の提出
臨時明細書を願書に添付して提出する場合、当該発明について特許を受けるために定められた期間(第三者による審査請求が行われた旨の通知がなされた日から3ヶ月、または特許出願日(臨時明細書の提出日)から1年2ヶ月になる日、のいずれか早い日)内に明細書作成の書式に従って全文が補正された正式明細書を提出しなければならない。定められた期限内に補正を行わなければ期限日の翌日に当該特許出願は取下げられたものとみなされる。
4. その他
臨時明細書を添付し、提出する出願は、正規の出願として認められるために、当該出願を基にしたパリ条約による優先権を主張する出願、あるいは国内優先権を主張する出願を行うことができる。従って、補正書を提出する代わりに、出願日から1年以内に優先権を主張する新たな出願を行い、臨時明細書の提出日を出願日として認めてもらう方法も可能である。
臨時明細書を添付し、出願する場合、請求の範囲を含む全文補正された明細書を提出すれば、当該出願に対して審査請求を行うことができます。そして、全文補正された明細書を提出した出願に限り出願公開され、このとき、出願公開公報には、全文補正された明細書に最初の明細書としての地位を有する臨時明細書が添付され、公開される。