韓國版ディスカバリー制度(証拠開示制度)に關する最近の動向
1.概要
韓国版ディスカバリー制度は2020年5月1日から施行された民事訴訟法上の新たな証拠開示制度です。これは米国のディスカバリー(Discovery)制度を韓国の実情に合わせて導入したもので、訴訟当事者が相手方の持っている証拠をあらかじめ確認できるようにする制度です。
証拠開示命令:裁判所が当事者の申請により相手方に特定文書や証拠資料の提出を命令することができます。相手方は正当な理由のない限りこの命令に応じなければなりません。
文書提出命令の拡大:既存文書提出命令制度を補強し当事者が保有する文書に対する開示範囲が拡大されました。特に相手方のみが持つ文書へのアクセスが容易になりました。
電子情報開示:コンピュータやサーバーに保存されている電子情報、電子メール、データベースなども開示対象に含まれます。
情報不均衡の解消が最大の目的で、特に企業と個人、大企業と中小企業間の訴訟で発生する情報格差を減らし、実質的な『武器の平等化』を実現します。また、訴訟の効率性を高め、当事者の立証負担を軽減する効果も期待されています。
2.韓国的な特徴
アメリカの制度とは異なり、裁判所の統制下で行われ、 濫用防止の為の様々な制限規定を設けられています。更に、弁護士のサポートを受けない当事者も利用できるよう手続きを簡素化しました。本制度は特に医療事故、製造物責任、勤労関係、会社関連の紛争などで有効活用され、韓国民事訴訟におけるパラダイム変化をもたらした重要な制度改善と評価されています。
3.韓国特許法上のディスカバリー制度
現在特許法 第132条 資料提出命令
裁判所は、侵害訴訟において、当事者の申立てにより、相手方当事者に当該侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料の提出を命ずることができます。
当事者が正当な理由なく資料提出命令に従わないときは、裁判所は、資料の記載に対する相手方の主張を真実であることと認めることができます。
しかし、現在まで裁判所の消極的な態度により特許侵害訴訟で上手く活用されて来ませんでした。
韓国版ディスカバリー制度強化に向けた国政審議事案
専門家事実調査制度:裁判所の指定する専門家(技術審理官等)が被告の 工場事務所等に立ち入り、侵害損害額の算定に関する証拠収集を行うことが可能です。
資料保全命令制度:裁判所は、資料の毀損及び使用妨害を防止するため、資料の保全を命じることが可能です。
裁判所外の陳述録音制度:裁判の迅速性を確保するため法廷外でも陳述録音可能です。
防御権の保障:被調査者に意見陳述の機会を付与し調査を遂行する 専門家を忌避する手続きを設けます。
李大統領の影響
中小企業の技術が奪取された場合に備え、審議中の韓国版ディスカバリー制度の補強および強化を指示しました。
中小企業の技術が侵害された場合、加害企業の資料提出の強制化を推進されます。
加害企業に対する懲罰的損害賠償額の引き上げおよび算定方式の改善(被害企業R&D費用も含む)を行い、懲罰的な責任を課すよう推進されます。
加害企業に対する行政措置の強化(是正命令と共に課徴金新設)で技術奪取に重大な責任を課すよう推進されます。
2025年11月4日付の公正取引委員会は、中小企業の技術奪取被害根絶対策として、裁判所指定の技術審理官の現場調査、資料保全命令制度、法廷外陳述録音制度、技術奪取被害事実の立証責任を加害企業へ転換などの対策を発表しました。