특허법인 남아이피그룹

IPニュース

ALL CONTENTS > IPニュース
IPニュース

Borderless Principle of Territoriality – Patent Law

Introduction Patent law has long developed around the principle of territoriality. That is, a patent granted in one country has effect only within the borders of that country and cannot be enforced against acts occurring in another jurisdiction. Patent registration and enforcement are independently handled under each national legal system. However, with the rise of the global digital economy and the proliferation of online platforms, it has become increasingly common for acts occurring in one country to directly target markets in another. In such cases, the limitations of traditional territoriality become apparent, and there is a growing need to reinterpret its boundaries. The principle of territoriality becomes blurred. A noteworthy case that reflects this issue is the decision rendered by the Korean IP High Court in Case No. 2023Na10693 (May 22, 2025). Case Overview This case involves an Italian company (“A”) holding a patent for sock knitting machines, which filed a lawsuit against a Chinese company (“B”), claiming that B’s actions in China infringed its Korean patent rights. Plaintiff A alleged that Defendant B manufactured infringing products in China and either sold or advertised them for sale in Korea. The court acknowledged that B did manufacture the products in China but found the evidence insufficient to prove actual sales in Korea. However, it was confirmed that B had advertised the products in Korean on Chinese e-commerce platforms and its own website (hosted on servers located in China), and had established a system enabling Korean consumers to make purchases. The decision focused on two key issues: Issue 1: Jurisdiction of Korean Courts in International Cases As this case involved a foreign plaintiff (Italian) suing another foreign defendant (Chinese) for alleged infringement of a Korean patent, a key issue was whether the Korean court had international jurisdiction. The court relied on Article 2(1) of the Act on Private International Law which allows Korean courts to have international jurisdiction if the parties or the subject matter of the dispute has a substantial relationship with Korea. The court evaluated the substantial relationship by focusing on (a) whether the result of the infringement occurred in Korea; and (b) whether the defendant’s advertising activities targeted Korean consumers. It concluded that since the advertisement was clearly aimed at Korean consumers and the infringement effect took place within Korea, Korean courts had proper jurisdiction. Furthermore, Article 39(1) of the same Act specifically provides that in IP infringement cases, a lawsuit may be brought in Korea if the result of the infringement occurred in Korea or the infringing act was directed toward Korea. Issue 2: Whether Overseas Advertising Constitutes Patent Infringement in Korea Under Korean patent law, an “offer for sale” is a form of patent infringement. The main question here was whether B’s advertising activities—carried out on Chinese platforms and websites—could be deemed an “offer for sale” in Korea. The defendant had provided product information in Korean, allowed payment in Korean Won, enabled ordering and delivery within Korea, and provided customer support for Korean consumers. Accordingly, the court determined that these actions constituted a practical attempt to induce sales to Korean consumers and thus qualified as an “offer for sale” in Korea. Conclusion The court ultimately recognized the jurisdiction of Korean courts and ruled that the defendant’s advertising activities constituted an infringement of Korean patent rights. A permanent injunction was issued. This case demonstrates how the principle of territoriality is being expanded and reinterpreted in the digital age. The traditional border-based limitations of patent rights are increasingly being neutralized in the online environment, and courts in various jurisdictions are now focusing more on actual impact and targeted markets rather than formal geographical boundaries. Japan’s Intellectual Property High Court has taken a similar approach. For example: In a 2022 ruling (July 20), it held that transmitting software from a foreign server to a device in Japan constituted “providing” the program invention. In a 2023 ruling (May 26), it found that transmitting system patent components from a foreign server to a device in Japan amounted to “manufacturing” and upheld infringement. In stark contrast to trade wars fought over rigid national borders, the expanding reach of patent rights across virtual borders is, to me, a personally fascinating development.

2025-06-13
READ MORE
IPニュース

海外IPニュース:EU「商標紛争:AcerのPREDATOR」

2023年11月20日、欧州連合一般裁判所(GCEU)は、台湾のIT企業であるAcer Inc.が保有する欧州連合(EU)商標(商標番号015171234)PREDATORに関する事件T-1163/23について判決した。   2017年、ポーランドの会社であるDomator24 sp.zは、欧州連合知的財産庁(EUIPO)にニース分類第20類の商品(アームチェア、事務用椅子、机シート及びクッション等)に該当するEU文字商標(商標番号016757262)PREDATORを登録した。   2021年、Acerは、ニース分類第9類(コンピュータ、IT機器、ノートブック、タブレット、キーボード、マウス、モニター、ヘッドセットなど)に該当する同一名称の先行欧州連合文字商標であるPREDATORに基づいて無効審判(declaration of invalidity)を請求した。 ​​​​​​​ 1審において、取消部(Cancellation Division)は無効審判請求を全面棄却した。 ​​​​​​​ しかし、控訴委員会(Board of Appeal)は、一般市民が中程度または高程度の注意力を持つ一般大衆であり、ニース分類第9類と第20類の商品が類似性は低いが流通経路と対象顧客(target consumers)が類似し相互補完的であると判断した。ただし、クッションは異なるとみなして除外した。 ​​​​​​​​​​​​​​控訴委員会は、両商標が同一であり、先行商標の識別力が中程度であるため、クッションを除く残りの商品について混同の可能性があると判断し、商標の一部無効を宣言した。 ​​​​​​​​​​​​​​ ​​​​​​​従って、裁判所は控訴を棄却し、Domator24に訴訟費用を支払うよう命じた。 ​​​​​​​ ポーランド企業は、この判決に不服を申立て欧州連合一般裁判所に控訴した。欧州連合一般裁判所は、問題となった商標間に混同の可能性があったかどうかを判断した。 ​​​​​​​ 一般裁判所は、「PREDATOR」商標の類似性を分析した結果、欧州連合知的財産庁の決定を支持し、欧州連合知的財産庁が商品の類似性と消費者の混同可能性を適切に評価したと結論付けた。 ​​​​​​​​​​​​​​ ポーランド企業は、欧州連合の知的財産庁が提出された証拠を正しく評価していないと主張したが、裁判所は、流通経路と対象顧客を含むすべての関連要因が考慮されたことを強調した。 ​​​​​​​例えば、オンラインストアは、しばしば異なる市場部門の様々な製品を提供するため、消費者が異なるカテゴリの製品を同一の商業的出所に関連付けることができない点を指摘した。 更に、製品が相互補完的であったとしても、これが該当製品のエンドユーザーが同じであるという意味ではない。例えば、アームチェアやソファを購入する際に、コンピュータを一緒に購入することは一般的ではないことを指摘し、これは、それら製品に関する大衆が異なるという点も指摘した ​​​​​​​<出典:韓国特許庁「海外IPセンターが伝えるグローバルIP現場ニュース」から抜粋>​​​​​​​  

2025-05-09
READ MORE
IPニュース

海外IPニュース:中国「刑事事件で返還された収益につき民事訴訟にて懲罰的損賠賠償を適用」

EVISUは日本のプレミアムデニムブランドとして広く知られており、特にユニークなカモメ形のロゴが特徴である。このブランドは全世界で商標権を登録し保護され、中国においてもEVISU商標が登録されている。 中国内で類似するロゴが使用されたり、商標が模倣されたりすることによって、いくつかの法的紛争が発生した。EVISUは、模倣品の流通を防ぐための強力な法的措置を講じて、商標権の登録だけでなく、模倣品の取り締まりやオンラインプラットフォーム内の侵害事例に対する異議申立など、積極的に対応してきた。 最近、EVISUはブランド保護のために刑事判決による損害賠償後、民事訴訟で懲罰的損害賠償を請求し、これに対する判決を受けた。 事件の基本情報 裁判所:広東省中山市第一人民法院 事件番号:(2024)粤2071民初5808号 原告 : 乾玺贸易(上海)有限公司 被告:張某1、張某2 判決日:2024年8月6日 事件の主要争点 被告の侵害行為が商標侵害に該当するか 被告の損害賠償責任の有無 懲罰的損害賠償の適用が必要かどうか 懲罰的損害賠償額の算定方法   中国<商標法>第57条第1項、第3項によると、①商標権利者の許可なく同一商品に登録商標と同一の商標を使用する行為、②登録商標権を侵害する商品を販売する行為は登録商標権侵害に該当する。 本法院により確定した刑事判決(2023)粤2071刑初875号によれば、被告が侵害した商品は衣類であり、当該衣類には次の3つの商標が使用された。 <原告に中国内の独占使用権が付与された商標> 第1656885号 第93669987号 第8851785号 (画像出所:中国商標網) これを比較した結果、該当商標の使用は商標的使用に該当し、原告が独占的に使用する権利を有する第1656885号及び第8851785号の登録商標と視覚的にほとんど差がなく同一の商標として認められる 更に、被告が販売した商品は該当商標が承認された商品と同じ種類であり、張某1と張某2は商標権者から許可を受けずに当該商標を使用したために商標権を侵害したものとして損害賠償責任を負わなければならない。   中国<民法典>第1168条によれば、2人以上が共同で侵害行為を行い、他人に損害を生じさせた場合、連帯責任を負わなければならないと規定する。刑事判決において、張某1と張某2が登録商標を偽造した商品を販売した事実が認められたため、法院は、これらが共同侵害に対する民事責任を負わなければならないと判決した。 更に、中国<民法典>第187条によれば、同一の行為により民事、行政、刑事責任を同時に負わなければならない場合、行政または刑事責任が民事責任の履行を免除しないと規定する。これにより、張某1と張某2は、刑事判決ですでに被害者に賠償した事実に基づいて民事責任が解消されたと主張したが、法院はこれを受け入れなかった。   <最高人民法院による知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈>第1条第1項によれば、原告が被告の故意的な法的権利侵害とその行為の深刻性を主張し懲罰的損害賠償を請求する場合、法院はこれを審理し処理しなければならないと規定する。 更に、第3条では、被告の知的財産権侵害の故意を認めるとき、法院が被害知的財産権の対象、権利状態、関連製品の知名度、原告と被告、又は利害関係者間の関係など、様々な要素を総合的に考慮しなければならないと明示する。 同解釈の第4条によれば、知的財産権侵害が深刻な場合、法院は、侵害の手段、回数、持続時間、地理的範囲、規模、結果などを総合的に考慮して深刻性を判断しなければならない。特に、被告が知的財産権の侵害を業としていたり、侵害で得た利益が膨大な場合や、被害者が被った損害が大きい場合、法院はこれを深刻な侵害と認めることができる 刑事判決によると、張某1と張某2は2020年から偽の登録商標商品を生産してきており、2022年8月22日に摘発された。販売した金額は213万8,235.5元(日本円:約4,250万円)に達し、これは上記の規定で定める懲罰的損害賠償要件に適合する。 原告は、法廷で130万元(日本円:約2,590万円)の懲罰的損害賠償を請求した。これは、刑事判決において張某1と張某2が返還した犯罪収益である42万元の4倍にあたる168万元から42万元を除いた金額である。 更に、違反により得られた利益に関して、原告は刑事判決に基づいて42万元(日本円:約835万円)を主張し、張某1と張某2はこれに異議を提起しなかった。法院はこれを認めた。   <最高人民法院による知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈>第5条第1項によると、法院が懲罰的損害賠償額を決定するとき、原告の実際の損害額、被告の違法所得額又は侵害で得た利益を基準に算定しなければならず、この金額は原告が侵害中止の為に支払った合理的な費用を含めてはならないと規定する。従って、原告が請求した懲罰的損害賠償は法的根拠があるが、法院はこれをそのまま認めなかった。 懲罰的損害賠償の倍数に関して、法院は、原告が提示した倍数が過度に高いと判断した。これにより、張某1と張某2の主観的過失の程度と侵害行為の深刻性を総合的に考慮し、懲罰的損害賠償額を違法所得の1倍である42万元と決定した。 従って、張某1と張某2は、原告に合計84万元(一般損害賠償額42万元+懲罰的損害賠償額42万元)(日本円:約1,670万円)を支払わなければならない。一般損害賠償額は権利者の実際の損失を保全するためのものであり、懲罰的損害賠償は、悪意の侵害に対する強力な抑制効果を目的とする。他にも、合理的支出費用として5千元(日本円:約10万円)を合わせて支払わなければならない。   判決結果:被告である張某1と張某2は、原告である乾玺贸易に懲罰的損害賠償額42万元と合理的支出費用5千元を支払わなければならない。最終賠償金額は一般損害賠償額42万元、懲罰的損害賠償額42万元、合理的支出費用5千元で、合計84万5千元(日本円:約1,680万円)である。   示唆点: 第一に商標権保護の重要性である。商標権侵害に対する徹底した対応が必要である。類似商標や模倣品の流通を防ぐために商標登録および保護を強化しなければならず、オンライン侵害事例に対する法的対応も必須である。 第二に、刑事及び民事責任の分離である。刑事判決と民事訴訟において賠償責任が別途に認められる場合がある。被害発生時、刑事告発と民事訴訟を同時に考慮する必要がある。 第三に、懲罰的損害賠償の適用である。故意の商標権侵害に対する懲罰的賠償が認められる。侵害が深刻な場合、より高い賠償額を請求することができる。 第四に、賠償額の算定である。懲罰的損害賠償額は、一般損害賠償額を基準に算定される。例えば、一般損害賠償額がa元であり、懲罰的損害賠償倍数を1倍と決定されれば、最終賠償額は、a元 +(a元×1倍)と計算される。合理的な支出費用は別途に算定する。 <出典:韓国特許庁「海外IPセンターが伝えるグローバルIP現場ニュース」から抜粋>

2025-05-09
READ MORE
IPニュース

海外IPニュース:米国「人工知能データ学習と著作権『フェアユース』関連の初判決でトムスンロイターの著作権保護を認定」

デラウェア連邦地方裁判所(U.S. District Court for the District of Delaware)は、2025年2月11日、技術スタートアップの「ロスインテリジェンス(ROSS Intelligence Inc.、以下「ロス」)」が人工知能ベースの法律検索ツールを開発する過程で、「トムソンロイター」(Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH)所有の法律リサーチプラットフォーム「Westlaw」のコンテンツを無断で使用し著作権を侵害したと判断した(Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH et al. v. ROSS Intelligence Inc.)。この判決は、人工知能モデルの訓練に著作権のあるコンテンツを使用することが「フェアユース(fair use)」に該当するかどうかを扱った最初の判決で、最近のオープンAI、メタなどを相手に進められている数十件の著作権訴訟にも影響を及ぼす可能性が高く、世間の注目を集めていた。   ステファノス・ビバス(Stephanos Bibas)担当判事は、West lawの「キーナンバーシステム(key number system)」と2,200以上の「見出し(headnotes:判決要約文に該当)」が著作権の保護を受けるに十分独創的であると判断し、トムソンロイター側に有利な一部略式判決(partial summary judgment)を下した。これは2023年、ビバス判事がトムソンロイターの略式判決申請を棄却した従来の立場を覆したものである。   ビバス判事は、自身の立場の変化を認め、以前にトムソンロイターの略式判決の申立を棄却した理由の一つが、フェアユースの法理における「市場への影響(market impact)」要件に関する判断を念頭に置いたためであったと明らかにした。つまり、ロスが著作物を変形(transformative)して利用しWest lawとはまったく異なる新たな研究プラットフォームを開発した場合、そうした製品は市場にて代替品になり得ないとする判断であった。   しかし、今回の判決を通じて、ロスがトムソンロイターの見出しを商業的に使用し、変形した利用にはあたらないため、フェアユースに該当しないと結論付けた。ロスが開発した法律リサーチツールは生成型人工知能技術ではなく、ユーザーが質問を入力すると関連する判例を提示する方式であり、これはWest lawが見出しとキーナンバーを利用し関連判例を提供する方式と非常に類似すると判断した。従って、ロスがWest lawの市場代替品(market substitute)を開発したもので、ひいては人工知能学習データに対する潜在的な市場に影響を与えることだけでもロスのフェアユース主張を排除する十分な根拠になると説明した。   トムソンロイター側は、2020年にロスに対して訴訟を起こし、ロスはWest lawのユニークな組織システムと大量のコンテンツを無断で使用したと主張した。これに対し、ロスはフェアユース、善意の侵害(innocent infringement)および著作権濫用(copyright misuse)などに関する抗弁を行ったが、裁判所はすべて受け入れなかった。ロスは過去にWest lawのコンテンツに対するライセンスを要求したが、トムソン・ロイターはロスが競合他社であることを理由にこれを拒否した。ロスは代わりに「LegalEase」という企業を通じて大量のメモ(bulk memos)を入手し、これを人工知能教育データとして活用して競争法律リサーチツールを開発した。しかし、裁判所は、この大量メモがWest lawの見出しで作られたものであったために、結局ロスがWest lawの見出しをベースに競合製品を構築したとの結論を下した。   <出典:韓国特許庁「海外IPセンターが伝えるグローバルIP現場ニュース」から抜粋>

2025-05-09
READ MORE
IPニュース

韓國特許庁の特許出願/審査/審判制度の紹介

□ 人工知能(AI)分野の審査実務ガイド 第4次産業はデータ(D)、ネットワーク(N)および人工知能(A)に代表される新しいデジタル融合複合技術分野である。第4次産業の代表といえる人工知能技術はディープラーニング技術の登場で急速に発展し、現在多くの産業分野に適用されている。人工知能技術の発展とともに人工知能関連の特許出願も急増し、韓国特許庁では2020年12月、人工知能技術の特徴を考慮して人工知能分野の審査実務ガイドを制定した。(2021.12.、2023.5.改正) 人工知能分野審査実務ガイドは特許審査官だけでなく人工知能関連発明を特許出願しようとする発明者にも人工知能発明の特許明細書作成において明確なガイドを提示するもので、本ニュースレターでは本審査実務ガイドを要約し紹介する。 人工知能技術の核心を成す神経回路網およびアルゴリズムは、ほとんどがソフトウェアの形で具現される。従って、人工知能分野の審査実務ガイドは基本的にコンピュータ関連の発明*審査基準に従い、人工知能関連特有の技術について審査基準を補充して説明する形式で作成された。*コンピュータ関連の発明:発明の実施にコンピュータ·ソフトウェアを必要とする発明 人工知能分野の審査実務ガイドは、明細書記載要件と特許要件(発明の成立性、新規性及び進歩性)に区分し、それぞれに対する審査基準と審査事例を含む。本号では明細書記載要件に対する審査基準を要約して紹介し、特許要件に関する審査基準は次号で紹介する。 <人工知能分野審査実務ガイド1(明細書記載要件)> 本審査実務ガイドにて扱う人工知能関連発明の基本概要図は以下の通りである。 上記の基本概要図に基づき、人工知能関連の発明を以下のように分類することができる。 データ前処理分野:定型または非定型ローデータを人工知能モデルの設計条件に合うように抽出して精製する技術分野 学習モデル定義分野:前処理加工された学習用データを活用して学習する学習モデルを設定·具現化する技術分野 物理的具現分野:設定された学習モデルの全体または一部をハードウェアで具現化する技術分野 学習済みモデル分野:学習済み学習モデルを特定の応用に活用する技術分野 発明の説明における記載要件 イ.実施可能要件の基本事項 (原則)発明の説明に人工知能技術分野において通常の知識を有する者が出願時の技術常識に基づき、その発明を容易に実施できるほど明確かつ詳細に記載されているか否かを基準として判断する。 人工知能関連の発明を容易に実施するためには、その技術分野における通常の知識を有する者が発明を具現化するための具体的な手段、発明の技術的課題及びその解決手段などが明確に理解できるように発明で具現化する人工知能技術に関する具体的な内容を記載しなければならない。 人工知能関連の発明を具現化するための具体的な手段としては、学習データ、データ前処理方法、学習モデル、損失関数(Loss Function)などがある。 ロ.実施可能要件の違反事例 (1) 発明の説明において、請求項に記載された発明に対応する技術的段階又は機能を抽象的に記載しているだけで、その段階又は機能をハードウェア又はソフトウェアでどのように実行し、又は実現するかを記載しておらず、出願時の技術水準を参酌しても通常の技術者が明確に把握することができず、請求項に記載された発明を容易に行うことができない場合 (2) 発明の説明において、人工知能関連の発明を具現するための具体的な手段として、入力データと学習されたモデルの出力データ間の相関関係を具体的に記載していない場合 ここで、入力データと学習されたモデルの出力データとの間の相関関係が具体的に記載されている場合とは、 学習データが特定されていて、 学習データの特性相互間に発明の技術的課題を解決するための相関関係が存在し、 学習データを利用して学習させようとする学習モデルまたは学習方法が具体的に記載されていて、 このような学習データおよび学習方法によって発明の技術的課題を解決するための学習されたモデルが生成される場合を意味する。 (3) 発明の説明において、請求項に記載された発明の機能を実現するハードウェア又はソフトウェアを単に「機能ブロック図(block diagram)」又は「フローチャート」のみで表現しており、その「機能ブロック図」又は「フローチャート」からどのようにハードウェア又はソフトウェアが具現化されるのか明確に把握することができず、出願時の技術水準を参酌しても通常の技術者が明確に把握することができず、請求項に記載された発明を容易に行うことができない場合。 ハ. 留意事項 (1) 発明の特徴が機械学習の応用にある場合、通常の機械学習方法を活用して発明の技術的課題を解決でき、発明の効果を確認できるならば、学習データを利用して学習させようとする学習モデルまたは学習方法が具体的に記載されておらず、単に通常の機械学習方法だけが記載されていても、実施可能要件を満足していると見なすことができる。 (2) 発明の特徴が機械学習基盤の人工知能関連発明から収集されたローデータを学習用データに変更するデータ前処理にある場合、発明の説明が以下の場合には実施可能要件を満たしていないと見なす。 収集されたローデータを学習用データに生成、変更、追加、または削除するためにデータ前処理段階または機能をどのように実行するかまたは実現するか記載していない 収集されたローデータと学習用データ間の相関関係を具体的に記載していない (3) 強化学習基盤の人工知能関連の発明は、エージェント(agent)、環境(environment)、状態(state)、行動(action)、補償(reward)間の相関関係を含む強化学習方法を具体的に記載していない場合には、実施可能要件を満たしていないものと見なす。 請求の範囲における記載要件 人工知能に関する発明において、請求の範囲における記載要件の判断は、基本的に特許·実用新案審査基準の『請求の範囲における記載要件』に従う。 本ガイドでは『請求の範囲における記載要件』の中で人工知能関連の発明審査に必要な事項を説明する。 イ 発明が明確かつ簡潔に記載されていること (1) 発明のカテゴリー 人工知能関連の発明は『方法の発明』または『物の発明』として請求項に記載することができる。 人工知能関連の発明は時系列的に連結された一連の処理または操作、すなわち段階で表現できるとき、その段階を特定することにより方法の発明として請求項に記載することができる。 人工知能関連の発明は、その発明を具現化する複数の機能で表現できるとき、その機能に特定された物(装置)の発明として請求項に記載できる。 また、人工知能関連の発明は、 『コンピュータプログラム記録媒体の請求項』、 『記録媒体に記録されたコンピュータプログラムの請求項』、 『データ構造記録媒体の請求項』 形式に加え、学習モデルや学習モデルを利用する物を請求する場合には、 『記録媒体に保存された、学習モデルを具現化したコンピュータプログラムの請求項』、 『学習モデルを利用する物(装置)の請求項』 形式として記載することができる。 ここで学習モデルとは、学習対象となるモデルが学習手段と結合されコンピュータ上で学習されるものとして、請求項には学習モデルに加え人工知能関連の発明を具現化するための具体的な手段をさらに記載しなければならない。ここで具体的な手段とは、学習データ、データ前処理、損失関数などを意味する。 学習対象となるモデルには多様な機械学習モデルの基本的な構造を含むことができ、例えば神経網(神経回路)の場合、入力層、出力層および入力層と出力層の間に一つ以上の隠匿層からなる基本的構造に具体的な手段が追加された形態として記載することができる。学習対象となるモデルの例としては、CNNs、RNNs、神経網(Neural Network)などがある。 (2) 発明を明確かつ簡潔に記載されていない例 (イ)発明の遂行主体が明確でない場合 当該発明が「使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工を実現したもの」であるが、請求項に記載された事項から発明の遂行主体(ハードウェア)が明確に把握できない場合には、当該請求項は明確に記載されていない。 (ロ)発明の対象が明確でない場合 請求項の末尾が「プログラム製品」、「プログラムプロダクト」、「プログラム産出物」等と記載されている場合、発明の対象を「プログラムを記録したコンピュータとして読み取り可能な記録媒体」、「プログラムが結合されたコンピュータシステム」のいずれにも特定することが困難であるため、発明が明確でない。

2025-01-06
READ MORE
IPニュース

バッテリー火災安全技術分野の特許動向

□ バッテリー火災安全技術分野の特許動向 全世界のバッテリー火災安全技術の特許出願、10年間で年平均15%増加 韓国が全世界出願件数1位(37.7%) ---------------------------------------------------------- 最近、二次電池の火災事故が急増し、熱暴走*によるバッテリー火災を予防·感知·消火する安全技術が注目を浴びており、韓国企業も関連技術の確保に総力を挙げている。  * 熱暴走:過充電、高放電、高温環境における露出、物理的損傷によるバッテリーの温度上昇で火災に至る現象を言い、熱暴走によりバッテリー温度は約1,000度にまで跳ね上がる。  韓国特許庁が最近10年間(2012~2021)の主要国特許庁(IP5:韓国、米国、中国、EU、日本)に出願されたバッテリー火災の安全技術に関する特許を分析した結果、2012年に715件に過ぎなかった出願件数がこの10年間で年平均15%ずつ増加し、2021年には13,599件に達し、そのうち、韓国籍の出願が37.7%と1位を占めることから韓国がバッテリー火災安全の技術成長をリードしていることが示された。 <国籍別出願動向> 全体出願13,559件のうち、韓国籍の出願が37.7%(5,122件)で1位を占め、中国(22.8%、3,099件)、日本(21.0%、2,855件)、米国(11.2%、1,518件)が後に続く。 特に、韓国は出願件数で2位を占める中国より1.7倍もの出願を行っていることが明らかとなり、当面の間、バッテリー火災安全技術の分野で韓国優位が続くものと展望される。 <技術類型別出願動向> バッテリー火災安全技術について類型別にまとめると、火災感知分野の出願件数が61.2%(9,866件)で最も多く、火災予防分野(32.8%、5,292件)、火災消火分野(6.0%、967件)の順となっている。 出願増加率は、火災消火分野が最も高く(年平均37.7%)現れたが、これは最近二次電池の火災事故が相次いで発生し、バッテリー火災の消火技術に対する要求が増加しているためと見られる。 <主要出願人> 主要出願人を見ると、韓国のLGエネルギーソリューション(2,735件、20.1%)、サムスンSDI(1,416件、10.4%)が1、2位を占め、3位CATL(701件、5.2%)、4位トヨタ自動車(398件,2.9%)、5位三洋(322件,2.4%)が後に続く。 10位圏内に6位SKオン(257件、1.9%)、9位現代自動車(189件、1.4%)など韓国企業が多数含まれ、韓国企業がバッテリー火災事故に対応するために関連技術を積極的に出願していると分析される。 一方、特許庁は国民の生命と安全を守るための積極行政の一環として、最近20年間(2003~2023)主要特許庁に登録されたバッテリー火災安全技術を中心に選別した『バッテリー火災安全技術特許100選』を発刊した。 発刊した特許100選は、特許庁のホームページ(www.kipo.go.kr)からダウンロードできる。 https://www.kipo.go.kr/ko/kpoBultnDetail.do?menuCd=SCD0200640&ntatcSeq=16918&sysCd=SCD02&aprchId=BUT0000048#1  

2025-01-06
READ MORE
IPニュース

「眞の發明者のみ記載可能」とする特許法施行規則改正

□ 「真の発明者のみ記載可能」となるよう特許法施行規則改正      - 特許法·実用新案法施行規則一部改正令11月1日から施行      - 発明者訂正制度の改善等      ------------------------------------------------------ 韓国特許庁は特許法·実用新案法施行規則の一部を改正した。 11月1日から施行された今回の改正施行規則は、真の発明者の記載のための発明者訂正制度の改善などを主な内容としている。 <発明者訂正制度の改善(発明者訂正時期の制限、証明書類の要求)> 発明者訂正制度は、発明者の氏名表示権を保障するにおいて、手続きの錯誤による発明者の記載漏れや誤記を、事後的に補完できるようにすることをその趣旨とする。 従来の発明者訂正は、事実上いかなる時期においても可能であり、設定登録前に特段の証明書類を必要とせず補正書のみを提出すれば可能であった。 しかし、登録査定後から設定登録前に発明者を追加または訂正して手数料の減免を受けたり、真の発明者でない者が公報に掲載されるといった誤用がなされる場合があった。 改正された発明者訂正制度は、こうした誤用を防止するため発明者の訂正時期を一部制限し、設定登録後にのみ求められていた証明書類を審査官の審査手続き中にも提出させるようにして真の発明者だけを記載するようにしたものである。 〇 改正内容 訂正時期の制限 審査手続きが終了した登録査定後から設定登録前までの期間は、発明者の追加または訂正に対する審査が不可能であるため訂正可能期間から除かれる。 (例外)発明者の同一性が維持される場合(例、発明者の改名、単純な誤記、住所変更など)に限り、いつでも訂正が可能。 証憑書類の添付 出願後-登録査定前にも発明者を追加または訂正するには、補正書に以下の書類を添付し提出しなければならない。 発明者の追加または訂正理由を記載した説明書 出願人および追加または訂正される発明者の署名または捺印入り確認書類 設定登録後は、従来の規定及び実務と同様で、訂正発給申請書に以下の書類を添付し提出しなければならない。 発明者の追加または訂正理由を記載した説明書 特許権者および申請前後における全発明者の署名または捺印入り確認書類 〇 要約 改正前と後で、発明者訂正のための提出書類は、次のとおりである。

2025-01-06
READ MORE
IPニュース

特許取消申請制度の御紹介

(1) 意義及び趣旨   特許取消申請制度(2017.3.1.施行)は、特許登録後一定期間の間、公衆に特許の見直しを要求する機会を付与し、何人も欠陥のある特許について先行技術情報に基づく特許取消事由を特許審判院に提出すると、審判官が当該特許の取消可否につき迅速に決定する。特許取消申請制度は、欠陥のある特許に対して早期検証を行い、問題のある特許の設定登録を防ぎ、権利の安定性を高める狙いがある。 (2) 特許取消申請対象   特許(実用新案)登録取消申請対象は、設定登録された特許及び実用新案である。複数の請求項がある場合は、請求項別に取消申請が可能である。ただし、特許権・実用新案権が消滅後は、取消申請ができない。 (3) 特許取消申請の理由及び証拠   特許取消申請は、特許法第29条に違反した場合(新規性、進歩性及び拡大先願)及び特許法第36条第1項から第3項までの規定に違反した場合(先願)に限って申請することができる。このとき特許法第29条違反の根拠として使用される先行技術は、書面又は電気通信回線を通じて公開された資料に限定され、公然・公知となった発明は除かれる。また、審査過程で拒絶理由に使用された先行技術のみに基づき、特許取消申請はできない。ただし、他の先行技術と組み合わせて進歩性を否定する根拠としては使用することができる。 (4) 特許取消申請期間   何人も特許権の設定登録日から登録公告日後6ヶ月になる日まで特許取消申請ができる。無効審判は特許権が消滅した後も請求することができるが、特許取消申請は特許権が消滅後には申請できない。 (5) 特許取消申請に対する審理及び決定   3人又は5人の審判官からなる審判官合議体は、特許取消申請が理由あると認められるときは、その特許を取消す旨の特許取消決定をしなければならない。特許取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加者に特許取消理由を通知し、期間を定めて意見書を提出したり、明細書又は図面に対して訂正を請求する機会が与えられなければならない。審判官合議体は、特許取消申請が理由なしと認められる場合には、決定でその特許取消申請を棄却しなければならない。 (6) 取消及び棄却決定への対応   取消決定については、特許権者は特許裁判所に訴訟を提起することができる。取消決定が確定したときは、特許権は最初から存在しなかったものとみなされる。確定した取消決定について当事者は再審を請求することができる。棄却決定については、特許取消申請者は不服を申立てることができない。  

2024-10-04
READ MORE
IPニュース

自然災害予防AIoT技術の特許動向

自然災害予防AIoT技術の特許動向   全世界の人工知能モノのインターネット(AIoT)ベースの自然災害予防特許出願、過去10年間で年間平均19.5%増加 韓国が全世界出願量の約半分を占める。サムスン電子とLG電子それぞれ1、2位 ------------------------------------------------ 世界気象機関(WMO)*は「アジア地域は温暖化傾向が全世界平均よりはるかに速く進んでおり、時々刻々と変化する気象状況に合った国家的支援と情報提供が喫緊で必要だ」と強調した。また、国連災害リスク低減事務局の調査結果**によると、2000年以降の20年は、その前の20年より洪水災害が2.3倍増加していることが分かった。 * 2023年アジア地域気候状況報告書、WMO  ** The human cost of disasters: an overview of the last 20 years, UNDRR, 2021 今後、自然災害が増加すると予想される中、世界の自然災害監視知能型モノのインターネット(AIoT)産業市場規模は2023年に66.8億ドルだったが、年平均27.9%ずつ成長し、2030年には373.2億ドルに達すると予測* されている。 *マーケット&マーケットリサーチ、https://www.marketsandmarkets.com ------------------------------------------------  気候変動により自然災害が急増している中、モノのインターネット(IoT)と人工知能(AI)技術が融合した人口知能型モノのインターネット(AIoT)*を活用して災害を予防する技術が注目されている。*人口知能型モノのインターネット(AIoT)ベースの自然災害予防技術:衛星データ、気象データ、モノのインターネット(IoT)センサーデータなどのビッグデータを収集し、人工知能(AI)学習を通じて被害状況を予測し、位置情報ベース避難経路を提供する技術  韓国特許庁が主要国特許庁(IP5:韓国、米国、中国、EU、日本)に出願された全世界のAIoTベースの災害予防特許を分析した結果、AIoTを活用した洪水など災害を予防する技術に関する出願が最近10年(2012~2021)の間に、年平均19.5%増加したことが分かった。  <国籍別出願動向>  全1,598件のうち韓国国籍の出願が48.5%(775件)で1位を占め、米国(18.1%、290件)、日本(14.4%、230件)、中国(10.3%、164件)の順であった。特に、韓国は出願件数で2位を占めた米国より2.7倍多い出願をしていたことが分かり、当分の間、AIoT基盤の災害予防技術分野で韓国の優位性が持続することが予想される。 <災害タイプ別出願動向>  災害の種類*別に見てみると、地質災害分野の出願量が51.4%で最も多く、風水害(23.9%)、気象災害(17.0%)、海上災害(7.7%)の順で現れた。出願増加率は風水害が最も高いもの(年平均28.9%)で現れたが、これは最近世界的に洪水などの風水害が急増しており、関連予防技術に対する要求が増加したものと見られる。*自然災害の種類:風水害(台風、洪水、強風など)、気象災害(干ばつ、熱波、寒波、オゾンなど)、地盤災害(地すべり、地震、地盤沈下など)、海上災害(赤潮、地震津波、嵐、海岸侵食など)。 <技術タイプ別特許出願動向> <AIoT基盤災害予防技術(風水害)特許出願事例>  〇 リアルタイム道路浸水監視装置および方法(登録番号:10-2368350、韓国建設技術研究院)  従来のCCTV映像分析や降水量に依存する間接的な分析方法とは異なり、レーダーセンサー部を用いて直接水位を観測することが可能な技術で、路面への雨水の流入及び水膜現象を判断し、道路路面の浸水位そして、水膜の危険度を決定してアラームを発生させる。また、浸水が発生した路面の映像を学習して浸水を予測できるモデルを生成して、インテリジェントCCTVと連携および融合しスマート道路浸水管理システムの構築が可能 <主な出願人>  主な出願人を見ると、サムスン電子(36件)、LG電子(35件)が並んで1位と2位を記録し、3位スカイモーション(32件)、4位クアルコム(29件)、5位インターデジタル(26件)が後に続く。韓国が世界で初めて移動通信網を通じて災害文字サービスを提供して以降、各国通信関連企業の災難警報に関する技術開発も活発化しており特許出願されているものと分析されている。

2024-10-04
READ MORE
IPニュース

コンセント制度の施行

先登録された商標があっても「共存」の道が開かれる   「商標共存同意制度(以下、コンセント制度と記載)」の施行により、先登録(出願)商標権利者が同意すれば類似の商標でも登録することが可能  関連紛争及び商標変更による損失を未然に防止し、後行商標出願人の安定経営にも寄与 ----------------事例---------------- 飲食店の開業を準備する甲氏は、自身の希望する店名を商標として登録できなかった。すでに特許庁には、乙氏の類似商標が登録されていたためである。乙氏は、地域とメニューが互いに異なるため混同するおそれがないと判断し、甲氏が商標を使用することを認めた。しかし、既存の制度上の問題から、甲氏は結局店名を別のものに変え、あらかじめ製作しておいた看板や食器を全て廃棄しなければならなかった。 アパレルネットショップを運営する丙氏は、最近、類似する名前の美容グッズショップがあることを知った。その美容グッズショップは既に商標登録されており、丙氏が商標権を侵害している状況にある。しかし、ショップの名前を変えれば、顧客を失う可能性も考えられ、どのように対応すべきかわからない状況にある。 ------------------------------------  2024年5月1日付けで施行された改正商標法*によれば、先に登録された同一・類似商標があっても先登録商標権者の同意を受ければ、後行の商標登録出願の登録が可能になった。このようなコンセント制度の施行により、同一・類似の先登録(出願)商標のために自ら使用しようとした(後行)商標が登録できないといった、小規模事業者((後行)商標出願人)にとっては朗報である。* 商標法の一部改正(2023.10.31.改正、2024.5.1.施行) <先登録(出願)商標権利者が同意すれば、類似の商標でも登録可能>  コンセント制度とは、先登録商標権者及び先出願人が、標章*及び指定商品**が同一・類似する後出願登録商標の登録に同意する場合***、該当する商標の登録を認められる制度をいう。* 標章:記号、文字、図形、立体形状またはそれらの組み合わせとそこに色彩を組み合わせたもの ** 指定商品:出願人が商標を使用したい商品の名称 *** ただし、商標と指定商品の両方が同一の場合は適用除外  従前、上記の事例1及び2のように同一・類似する商標が既に登録されているか、先に出願をした商標が存在する場合、後に出願した商標は登録が拒絶され、(たとえ、先登録権者の認可を得たとしても)商標の譲渡・移転といった煩雑な手続きを経て該当商標を使用する以外に方法がなかった。コンセント制度が施行されることで、出願人のこうした不便が解消され、商標権をめぐる紛争も未然に防ぐことができると期待されている。 特に中小企業や小規模事業者の商標使用と安定した企業経営に寄与する模様で、最近、拒絶査定を受けた商標の40%以上が同一・類似の先登録商標があるという拒絶理由のためであり、そのうち80%の出願人が中小企業及び小規模事業者の経営者であった。* 全拒絶件数(2022年国内審査基準)48,733件中、先登録による拒絶件数19,651件  これと共に、需要者保護のために、共存商標のいずれかが不正な目的で使用され、需要者に誤認混同を起こす場合には、その登録を取り消すことができるようにする、とした本制度の悪用を防ぐ規定も設けられている。                                                            

2024-10-04
READ MORE
IPニュース

一括審査制度の紹介

韓国特許庁は、従来の一方通行的な特許審査から脱却し、特許審査過程において、審査官が出願人との間でコミュニケーションをとりながら、案件毎にカスタマイズされた審査を行うことで、正確な審査に裏付けられた高い品質の特許を作り上げる様々な制度を行っている。  一つの製品群に関わる複数の知的財産出願を同時に一括して審査する一括審査制度、そして審査過程において拒絶理由通知に対応した補正案につき審査官と面談を通じて事前に意見を交換することができる補正案レビュー制度及び再審査面談制度が存在する。そのなかで補正案レビュー制度、及び再審査面談制度は、既に紹介した。予備審査制度は2024年3月1日に廃止されたが、本号では、一括審査制度について紹介する。   (1) 意義及び趣旨  一括審査とは、一つの製品群又は同一事業に係る複数の特許・実用新案登録・商標登録・デザイン登録出願について出願人が望む時期に一括して審査する制度をいう。本制度を利用すれば、企業の事業戦略に応じて、希望する時期に様々な知識財産権を同時に確保することが可能で、新製品発売時期前に製品に関する知識財産権のポートフォリオ形成に有利である。​​​​   (2) ​​一括審査を申請できる出願  一括審査の申請対象は、次の1.又は2.に該当する出願に限定され、審査着手前の2以上の特許・実用新案登録・商標登録・デザイン登録出願である。この特許出願及び実用新案登録出願は、審査請求された出願に限定する。(注:韓国では実用新案においても実体審査が行われる) 1つの製品群(サービスを含む)または同一事業に関連する以下のいずれかに該当する出願 出願人が実施している、あるいは実施準備中の出願 輸出促進に直接関わる出願 「ベンチャー企業育成に関する特別措置法」第25条におけるベンチャー企業の確認を受けた企業の出願、又は「中小企業技術革新促進法」第15条における技術革新型中小企業に選ばれた企業の出願 「一人創造企業の育成に関する法律」第11条第1項における一人創造企業技術開発事業の成果物に関する出願 「中小企業基本法」第2条における中小企業であって創業後3年以内の企業による出願 規制特例対象に関するもので「規制のサンドボックス」*申請を行った出願(*規制のサンドボックス:新技術、新産業分野において新製品やサービスをリリースする際、一定期間または一定の地域内で既存の規制を免除または猶予させる制度をいう) ​​​ 同一の国家新技術開発支援事業の成果物に係る出願   (3) ​​​​​​​​​​​​​​一括審査手順 (申請) ​​​​​​​一括審査を申請しようとする者(申請人)は韓国特許庁ホームページから一括審査請求書を作成し、一括審査申請対象証明書類を添付して申請する。 ​​​​​​​​​​​​​​この際、申請人は一括審査申請日の日後より7日から14日までのいずれかの日を一括審査説明会の開催希望日として指定しなければならず、一括審査説明会希望日から14日になる日の日後で、いずれかの日を審査着手希望日に指定しなければならず、着手希望日の日後、3月になる日から1年以内のいずれかの日を審査終了希望日に指定し申請しなければならない。 (方式審査) ​​​​​​​韓国特許庁の一括審査担当者は、一括審査を受けようとする出願が申請対象に該当するかどうか、および申請者の一括審査申請が申請手続きを満たしているかどうかについて審査する。 (一括審査説明会) ​​​​​​​申請人は、担当審査官に一括審査申請出願について説明し、当該出願が単一のファミリーまたは同一の事業に関する出願であることを説明する。 一括審査担当者と担当審査官は、一括審査を受けようとする出願について一括審査の適否、および一括審査対象出願を決定する。 一括審査担当者、担当審査官及び申請者は、着手希望日と終結希望日に基づいて着手予定日ならびに終結予定日を協議にて定めることができる。 (審査処理) ​​​​​​​担当審査官は、一括審査を決定した出願について着手予定日に合わせて審査を着手する。   ​​​​​​​

2024-07-02
READ MORE
IPニュース

次世代ディスプレイ「マイクロLED」技術の特許動向

OLEDに続きマイクロLED分野も韓国企業が技術開発を主導  大型テレビやスマート機器など多様な分野に使用でき、次世代ディスプレイとして注目されるマイクロLED* 分野における登録特許の分析を行った結果、韓国が特許登録件数において世界トップを記録し技術開発を主導していることが判明した。  *マイクロLED:100μm以下のLED素子の一つ一つが個々の画素で直接発光するディスプレイ技術。LCDやOLEDに比べスリムにでき、LED素子の光を個別に制御して、より細かなコントラスト比を実現できる。また、有機物素材を使用したOLEDとは異なり、画質劣化や焼付き(残像)現象がなく、電力消費量を抑えて高寿命で応答速度も速い、といったメリットのためLCD、OLEDに続く次世代ディスプレイとして注目されている。   (出典: https://www.microled-info.com/microled-vs-oled) マイクロLED市場は、2022年に1400万ドルから2023年には2700万ドルに達した前年比92%に成長した後、2027年には5億8千万ドルに成長し、年平均136%の成長が見込まれる*。(* トレンドフォース、2023年8月)   韓国特許庁が主要国特許庁(IP5:韓国、米国、中国、欧州連合、日本)に登録された全世界特許を分析した結果、最近10年間(2013年~2022年)のマイクロLED技術における登録件数は2013年540件から2022年1,045件と2倍近くに増加し、年平均増加率7.6%を記録した。 登録権者を国籍別に見ると、1位が韓国で23.2%(1,567件)と最も多く、2位日本20.1%(1,360件)、3位中国18.0%(1,217件)、4位米国16.0%(1,080件)、5位欧州連合11.0%(750件)の順であった。同期間における登録件数の年平均増加率は1位中国(37.5%)、2位欧州連合(10.0%)、3位台湾(9.9%)、4位韓国(4.4%)、5位米国(4.1%)の順に現れ、中国の該当分特許登録件数が急増していることが確認された。その間、技術的優位の座にあった韓国と、最近マイクロLED技術の研究開発を積極的に進める中国との間で更なる競争激化が予想される。 <登録権者の国籍別特許登録動向(2013~2022)> 主要登録人としては、LGイノテック(6.0%、404件)が1位を占め、2位サムスン電子(5.7%, 384件), 3位 日本の半導体エネルギー研究所(SEL)(4.7%, 315件), 4位 サムスンディスプレイ(3.6%、240件)、5位中国の京東方(BOE)(3.3%、223件)の順であった。韓国企業としては、1位LGイノテック、2位サムスン電子、4位サムスンディスプレイ、9位LGディスプレイ(5.8%、133件)の4社が10位圏内に入り、韓国企業がマイクロLED技術で世界をリードしていることが確認された。 <主要登録人別特許登録動向> 韓国特許庁(KIPO)2024.4.8 報道資料より

2024-07-02
READ MORE

メッセージをお送りください

通常、數時間內にご対応致します。

個人情報の使用に御同意いただける場合は、チェックボックスをオンにしてください。